鉄部・金属部と錆対策

2025.09.16

錆は“結果”ではなく“現象”。 水分・酸素・塩分・電位差——条件がそろうと、金属は必ず錆びます。だからこそ、現象を断つ設計と素地調整→防錆→上塗の三層ロジックが王道。今回は“端部・小口・重なり・ビス頭”という錆の起点に狙いを定め、長寿命化の実務を徹底解説します。🔧

1. 錆の科学と環境要因 🔬

酸素+水:結露や雨水滞留で酸化反応が加速。

塩分(海塩粒子):沿岸・潮風は電解質を供給し続ける。

電位差(異種金属接触):銅×亜鉛/アルミ、ステンレス×普通鋼などで電食が起きやすい。

微細な“傷・角・切断面”:エッジ部は膜厚不足→局所腐食の震源地。🗡️

原則:水を溜めない形状×電位差を絶つ絶縁×膜厚を角で稼ぐ。この三位一体で錆は遅らせられます。

2. 錆のタイプと見分け方

赤錆:鉄の酸化。粉状→進行すると層状剥離。

白錆:亜鉛めっき部に発生。アルカリ性水分や滞水で多発。

糸錆/斑点錆:塗膜下を細く進行。素地調整不足のサイン。

もらい錆:近接金属くず・鉄粉が原因。洗浄・ケレンで除去。

3. 素地調整(ケレン)と脱脂 🪚🫧

目標:健全部露出+粗さ(アンカー)+油分ゼロ。

手順:

脱脂(シンナー/アルカリ洗剤→水洗い→乾燥)

錆落とし(スクレーパー/ワイヤーブラシ/電動サンダー)。深錆は素地金属まで戻す。

研磨番手:#80→#120→#180でならす。角は面取りして上塗の食いつきを上げる。

ダスト除去:ブロワ&ウエス。手脂も敵。

程度の目安:重度→動力工具中心/軽度→手工具+変性防錆材併用。※穴あき・減肉は交換が原則。塗りでの延命は限定的。

4. 端部・小口・溶接・ビス頭—“ストライプ塗り”

先行タッチアップ:切断小口・角・ビス頭・リベット周りを先に1〜2回塗る(ストライプ)。

エッジシーラー:鋭角エッジは塗膜が薄くなるためエッジ厚付け材や高粘度塗装で補う。

溶接ビード:スパッタ・スラグを除去し、ピンホールを充填してから下塗へ。

5. 防錆下塗の選定 🧪

エポキシ防錆(2液):密着・遮断性◎。鉄部の標準解。

亜鉛リッチ(ジンクリッチ):犠牲防食で切断面やボルトに強い。上塗との適合と乾燥に注意。

メッキ対応プライマー:ガルバ/溶融亜鉛めっき面に必須。白錆の再発抑制。

変性防錆材:軽微錆での転化・封じ込めに有効。ただし厚膜防錆の代替ではない。

6. 上塗の考え方(耐候×柔靭×低汚染) 🎨

ウレタン/シリコン:付帯部の標準。柔靭性と作業性のバランス。

フッ素/無機:沿岸・日射強なら投資価値大。端部の厚みを確保して真価を引き出す。

艶:3〜7分艶でラインの歪みが目立ちにくい。金属は艶ありで防汚性UPも。

7. 異種金属接触と電食対策 ⚡

絶縁:ステンレス部品と鉄部の接触には樹脂ワッシャ/テープを介在。

銅樋×亜鉛:雨水経路で触れると亜鉛側が犠牲に。絶縁+排水設計で回避。

アース/漏電:設備絡みは電気的問題も疑う。専門連携。

8. 雨仕舞と形状の最適化 💧

重ね代と水切りを設け、毛細管逆流を断つ。

水平面や袋小路は滞水しやすい→R処理や排水穴で水抜き。

シーリングは二次防水。まず板金的に一次を整える。

9. 膜厚管理と気象判定 📏🌤️

WFT/DFT:ウェット膜厚をコームゲージで測定→乾燥率でDFT推定。角・端部は厚み不足に要注意。

露点差≥3℃/湿度≤85%/強風・降雨NG。低温多湿は白化のリスク。

10. 施工フロー(標準) 🧰

洗浄→乾燥→脱脂→ケレン→研磨→ダスト除去

先行タッチアップ(ストライプ)

防錆下塗(エポキシ/ジンクリッチ/メッキ対応)

乾燥→軽研磨(層間密着)

中塗→上塗(必要に応じ高膜厚)

端部・ビス頭の最終タッチアップ→完了検査

11. トラブルシュート

早期剥離:脱脂不良・露点ミス・プライマー不適合。→原因面まで戻し再塗装。

膨れ(ブリスター):滞水・素地含水・塩分。→排水改善+素地再調整。

再発錆:角・小口の膜厚不足。→エッジ厚付とストライプ増回。

12. 点検・保守

2〜3年ごとに端部・ビス頭を重点点検。早期にタッチアップすれば寿命は伸びる。

沿岸は年1回の水洗いで塩だまりを除去。






次回(第5回)は屋根塗装の勝ち筋。スレートの縁切り、棟板金のビス打替え、金属屋根の白錆対処、そして遮熱の期待値まで、一気に攻略します。🏠

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