屋根塗装の勝ち筋

2025.10.06

屋根は“最前線”。 紫外線・熱・風雨の直撃、加えて朝露→急乾燥のサイクル。外壁より苛酷です。だからこそ、下地の見極めと排水(縁切り)、棟板金の固定、防錆+高耐候の4点セットで挑みます。🧭

1. 屋根材別の前提 🧱

スレート(カラーベスト):縁切りが命。反り・割れは補修。下塗は浸透シーラー+場合により遮熱下塗。

金属(立平・瓦棒・折板):白錆/赤錆・端部・ボルト穴・重なりを重点。エポキシ防錆/ジンクリッチで切断面を守る。

セメント瓦:塗装可。素地強化→専用下塗→上塗。

陶器瓦:基本塗装しない(割れ補修・漆喰・雨仕舞が中心)。

2. 現況診断 🔍

藻/苔:洗浄+薬剤で根を断つ。残ると上塗の密着低下。

割れ・欠け:専用パテ/シールで補修→面出し。

棟板金:釘抜け・ビス浮き・継手のシール切れ。貫板(木下地)の腐朽は交換が原則。

金属折板:ボルト周りの錆・シール劣化。シーリングワッシャの状態確認。

3. 洗浄〜下地の作り方 🚿🧱

高圧洗浄:圧10〜15MPa/距離を守り、下から上→上から下でムラを防ぐ。割れスレートは近接噴射NG。

乾燥:屋根は朝露が戻る。午前中は乾燥待ちが基本。含水は剥離・白化の元。

下塗:スレートは浸透シーラーで吸い込みを止める。痛みが強い場合は2回下塗で素地再生。

4. スレート“縁切り”の全て 🔪

目的:重なり部の毛細管逆流を断ち、滞水・凍害を防ぐ。

方法:

タスペーサー:規定枚数を縦横ピッチで差し込み。塗膜で再閉塞しない。

カッター縁切り:既存閉塞を手切り→タスペ併用が安心。

失敗例:縁切りなし→雨水が上走りし、室内漏水や凍害剥離。最重要チェック項目。

5. 棟板金の固定と止水 🪛

釘→ビス化:ステンレスビス+シーリングで引き抜き抵抗UP。

貫板:腐朽は樹脂製や防腐木へ交換。板金下の通気と止水を意識。

継手:重ね代+シール。**一次止水(板金)**を先に整える。

6. 金属屋根の要点 ⚙️

白錆(亜鉛):洗浄→メッキ対応プライマー。

赤錆:素地露出まで戻しエポキシ防錆→上塗。

折板ボルト:ボルトキャップやシーリングワッシャで再錆を抑制。ストライプ塗り必須。

立平ハゼ:重なり部の毛細管→端部厚付け+水切りで対処。

7. 遮熱の期待値と相乗効果 🌡️

反射率/SRIが高いほど表面温は下がるが、小屋裏断熱/換気が整っていてこそ室内体感に反映される。

濃色でも近赤外反射顔料で差を縮小可能。低汚染と組み合わせて性能維持。

8. 気象・露点・時間帯の戦術 🌤️⏱️

朝露:露点差≥3℃までは待つ。無理塗りは白化/艶引けを招く。

強風:飛散・肌荒れ。希釈/道具/ネットで制御。

降雨予報:インターバルを逆算し、途中で止められる位置まで作業する。

9. 施工フロー(標準) 🧰

洗浄→乾燥→下地補修(割れ・ビス)

下塗(1〜2回)→乾燥

縁切り(タスペ/手切り)

中塗→上塗(必要なら遮熱)

棟板金のビス化+継手止水

仕上げ点検(縁切り再確認・端部タッチアップ)

10. ありがちトラブル&回避 😓

塗装で雨漏りが止まる誤解:ルーフィング破断には塗装は無力。防水/板金工事と連携。

ムラ:下地の吸い込み差→下塗回数と希釈で均す。

ブリスター:含水・塩分→乾燥・洗浄をやり直す。

11. 検査と記録 📸

縁切り状態を近接写真で残す。

棟板金ビスのピッチ・本数、タスペ枚数を記録。

WFT/DFT・温湿度を日報化。





次回(第6回)は塗料の化学を“完全版”にアップグレード。樹脂・顔料・添加剤・硬化、ラジカル制御から親水・低汚染まで、現場で効く理屈を深掘りします。🧪🎨

一覧へ戻る